
小春日和の昼下がりのコト。
ヒナタが、連日つづいた激務をこなし漸く半月ぶりの休暇を貰って宗家へ帰宅すると、屋敷の中庭に面した縁側に腰掛けるネジの姿を見かけた。
「あれ…ネジ兄さん?」
任務で使用した重くかさ張る荷物を背負い直し、ヒナタは不思議そうに小首を傾げる。
修練の合間に休憩でもしているのか、従兄がひとり廊下の柱に寄り掛かり寛いでいる。
「こんにちは。ネジ兄さ…ん?」
挨拶を…と声を掛けようとしたヒナタの足がふと躊躇する。
「もしかして…ネジ兄さん寝てる?」
いつものように瞑想をしているかと思いきや…珍しいコトに、従兄はスヤスヤと寝息さえたててそこで眠っていた。
人の気配に聡いはずのネジが、人前で無防備に寝顔を晒している…。
ヒナタは、何となく足音を忍ばせてネジの背後から近寄り、そうっと昼寝中の横顔を覗き込んでみた。
「…熟睡してる」
全く起きる気配もないネジの意外すぎる姿を目撃したヒナタは、驚きに目を丸くした。
ある意味、とても貴重な場面に出くわしたとも云える。
久しぶりに逢うネジは、また少し大人びていて…その眉目秀麗な顔立ちを、ヒナタは好奇心いっぱいにまじまじと観察する。
「あ…睫毛長い…」
伏せられた睫毛が、ネジの白い頬へ長く影を落とし、緩やかな呼吸に開くカタチの良い唇は、僅かに微笑んでいるようにも見えた。
「ネジ兄さんの肌、綺麗だな…。男の人に言うと変だけど、美人だし…」
いつも眉間に刻まれているシワもなく、硬く冷ややかな表情でもなく、無心に眠る穏やかな寝顔は、生じっかの美女では太刀打ちできないレベルだろう。
そして背の中程までのばしたネジの長い黒髪は、どんな手入れをしているのか艶と腰のある上等な絹糸のような輝きがある。
天は二物を与えずとは言うけれど、ネジは、違う事なく素晴らしい才能と極上の美しさを兼ね備えている。
心の底から羨ましく思ったのか、ヒナタは悔しそうに眉を潜め感嘆の溜息をそっと漏らした。
とは云え、ぽかぽか陽気に心地良くまどろむネジの寝顔を見ていると、終日任務に追われて寝不足のヒナタにしてみれば無性に腹ただしくて…ムクムクと悪戯心が芽生えてくる。
「ネジ兄さんってば…ズルイ…」
いつものヒナタであったならば、多分そんな事を考えたりはしなかっただろう。だが。
疲労と睡眠不足で鈍くなった思考は、ヒナタにいつになく大胆な行動を取らせた。
「うふっ。うふふっ。こんな所で眠ってるネジ兄さんがいけないんですよ〜」
ヒナタは、愉しそうに呟くと、おもむろに持ち帰ってきた荷物の中身を手探りで掻き回しだした。
ほどなく柔らかな感触が指先に触れ、いそいそと目的の物を取り出すと、キラリンとヒナタの瞳が妖しく輝いた。
荷物袋の中から出てきたのは、つるつるとした赤い玉。もっさりと長く白い髭。赤地に白いふわふわの縁どりがしてある服と帽子。それに動物の角を模した頭飾り。他にも動物の耳を模したらしい飾り…等々。
「どれにしようかなっ?ん〜やっぱりコレかなぁ?あはっ」
クスクスと嬉しそうな含み笑いを漏らしながら、ヒナタは喜々としてそのうちの一点を選びネジの頭へちょこんと乗せてみる。
ところが、サラサラと滑らかな黒髪は、髪飾りを上手く留めないとスルリと抵抗なく落としてしまうので、次の瞬間ヒナタは容赦なくグサリッと髪の毛に挿した。
「あはっ。あはははっ。可愛い〜ネジ兄さんっ。すっごく似合うっ」
選んだのは、ネジの黒髪に、似合いの黒い兎耳。
ケタケタと無邪気に笑うヒナタは、僅かながらネジの身体が揺らいだ瞬間を見逃していた。
むしろここまでされて起きないネジを訝る事もなく、ヒナタは満足気にふわぁっと欠伸を漏らす。
「ん〜眠くなってきちゃった。ちょっとだけ…休んで…」
柔らかな陽射しがぬくぬくと疲労した身体を暖め、抗いがたい誘惑と共に睡魔のピークがやってきた。
ふわぁっともうひとつ溢れる欠伸を噛み殺し、ヒナタは、惹かれるようにペタリとネジの背にもたれかかった。
「うふふ〜兎さん捕まえたっ。なんてね…」
コツンと額を擦り寄せれば、ネジの背からほかほかと温かい体温が伝わってくる。
ネジと身体を密着させる毎に不思議と安堵感に包まれ、気持ち良さ気にヒナタはとろんと目を細めた。
「ふふ…。なんだか、小さい頃に見た…、お父様の背中みたい…」
広くて温かくて、とても安心できる──。
そう続ける声は、小さくスヤスヤと柔らかな呼吸の中へ途切れていった。
「……」
クークーと幸せそうな寝息をたてているヒナタを背に、ひとしきり悩むネジがひとり。
ヒナタが近づいて来て自分の寝顔を観察している事に、途中から気付いていたとはいえ…、コレはいったいどうしたコトか。
任務帰りのヒナタの髪から、僅かながら酒気を帯びた香りがしているのに気がついた時にはもう…目を開けるタイミングなどなかった。
頭に突き立てられた兎の耳はまだしも…自分の後ろ姿に父親の背中を見たという告白はどう受け取ればいいのか。
振り返ってヒナタを問いただそうにも、こうも体重を預けられていては身動きも出来ない。
「ヒナタ様。私に、どうしろと…」
暢気に眠る背の君へ、ネジは溜息まじりにボソリと呟いた。
あとがき
こんなヒナタとネジの関係などはいかがでしょうか?(ビクビク…)辺境のサイトからこんにちは。水属缶の水乃です。
私自身ネジ弄りして遊ぶのが好きなものですから、うちのヒナタ様はあらゆる意味で最強な方として存在してます。ネジヒナと言うよりも、ヒナタ上位なまさにヒナネジ。優しげで凛としたヒナタと沈着冷静なネジの…たまに垣間見せる意外な表情などに萌える想いが高鳴るのであります!
作品中のヒナタは、年末の忙しい時期にクリスマスのパーティーグッズを担ぎ八班の仲間と任務をこなしていた模様(笑)赤丸のトナカイとか、蟲のソリとか…オプションでバニーな仮装のヒナタとか、ミニスカートのサンタ服も脳内ネタにはありました。
ちなみに、この後なかなか起きないヒナタを背中に寄り掛からせたまま、そして兎耳もつけたままネジは二度寝して…ハナビに発見されるオチがあったりします。そしてネジがハナビに爆笑される中、ひと眠りしてスッキリ酔いが醒めたヒナタが、更にぷっと笑うのです。
勿論、ヒナタ自身に悪戯の記憶はありません。疲れた身体に酒が入っていて、あまりにも眠くなると人は何をするかわからない…だから兎のコスプレイさせて、ヒナタがネジで遊んじゃう。されるがままのネジもまた可愛いじゃないかっと言うオチで、宜しくお願いしまーーーす!(脱兎)
(UP 09/12/20)

